中村雄二郎『臨床の知とは何か』岩波新書、1992年
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                        内容
                        
                         この本は、数年前に読み始めて早々に挫折しました。哲学書を解する訓練をしていない私にとって、出てくる人名、用語、論理展開が「???」のオンパレード。しかし、今回は頑張りました。一気に読んで、「全て理解できた!」と言い切れないところが悲しいけれど、以前よりは進歩です。
                         この本のなかで中村先生は、「臨床の知」を次のように書いています。「科学の知は、抽象的な普遍性によって、分析的に因果律に従う現実にかかわり、それを操作的に対象化するが、それに対して、臨床の知は、個々の場合や場所を重視して深層の現実にかかわり、世界や他者がわれわれに示す隠された意味を相互作用のうちに読み取り、捉える働きをする」(p.135)。
                         今私が明らかにしようとしているテーマの背景をなす概念であることに間違いはないのですが、果たしてこの本から学んだことと調査で得られた結果をどうすり合わせていくのか、私自身の「臨床の知」が問われそうです。まだまだ読み込みが足りないのでしょう。そして面白かった点は、「臨床の知」という発想に至るまでの、中村先生の思考の変遷過程がわかることです。
                         関心がある方は、ぜひともチャレンジしてみてください。
                        
                        
                        
                        目次
                        
                        序文―なせ<臨床の知>なのか
                        
                        
                        
T <科学>とはなんだったのか
                         1 学問の危機・地球の危機
                         2 科学と生活世界
                        
                        U 経験と技術=アート
                         1 知の異なった可能性
                         2 経験・実践と技術を顧みる
                        
                        V 臨床の知への道
                         1 情念から制度そして言語へ
                         2 共通感覚からの出発
                        
                        W 臨床の知の発見
                         1 演劇的知/パトスの知/南型の知
                         2 臨床の知の仕組み
                        
                        X 医療と臨床の知
                         1 臨床医学の原型と展開
                         2 医療の現在を考える
                        
                        Y 生命倫理と臨床の知
                         1 脳死と臓器移植の問題
                         2 説明と同意の問題
                         
                        あとがき