相手を理解するための7つのスキル 本文へジャンプ
ローレンス・M・ブラマー、ジンジャー・マクドナルド著、堀越勝監訳(2011)『対人援助のプロセスとスキル』
金子書房の「第4章 理解のためのスキル」(105〜149ページ)を筆者が要約してまとめる。

スキル
詳細
具体的な行為
ガイドライン
具体例
1聴くスキル
寄り添うこと
言語および非言語的な行動に注目する
1.相談者が話している時は、その人を見ることによってつながりを確かなものにする。
2.あなたが興味を持っていることをそれとなく示すような、自然でリラックスした態度を維持する。
3.あなたの意図するメッセージを伝えるような、自然なしぐさを使う。
4.中断したり、質問したり、新しい話題に変えることをせず、相談者の言葉に関係した言葉を述べる。
「言っていることがわかります」「あなたが経験したことをお察しします」「確かにそのことが関係しているように見えますね」
「ふーん」「へえー」
言い換えること
伝えたい基本的なメッセージに応答する
1.相談者の基本的なメッセージに耳を傾ける。
2.その基本的なメッセージを簡潔にまとめ、相談者に対して言い直す。
3.理解を促進するための言い換えの的確さと有益性を確認するために、相談者が発する何らかの手がかりを観察したり、反応を求めたりする。
相談者「私とてもじゃないけど理解できないんです。彼女は1分前にこれをやれと言うのに、1分たったらあれをやれと言うんです」
援助者「彼女は本当にあなたを混乱させるんですね」
相談者「ええ、そうなんです。それにその上……」
明確にすること
自己開示することおよび議論に焦点を当てる
1相談者の真意を汲み取ることに困難を覚えていることを認める。
2.言い換えを試みる。または明確化や繰り返しあるいはさらなる説明を相談者に求める。
「私は混乱しています。あなたが言っていたことについて私が思ったことを言わせてください」「ちょっとそこのところでわからなくなってしまいました。あなたが自分の仕事についてどのように感じているかがはっきりしないのです。簡単にもう一度繰り返して、説明してもらえませんか?
現実検討
聞いていることの正確さを判断する
1.自分が受け取ったと感じたメッセージを言い換える。
2.話されたことに対する自分の認識の正確さについて、直接相談者に確認を求める。
3.自分の認識が明確でない場合、相談者によって訂正されたその認識を受け止める。
「あなたは私といると、イライラしているように見えますが、どうでしょうか?」「あなたが立てた計画は本当に自分自身が望むものなのでしょうか。いくつか懸念されていることをお話ししてくださったように感じますが、私の聞き違いでしょうか?
 
2.導くスキル
質問
開かれた質問や閉ざされた質問をする
1.「はい」や「いいえ」で答えられない開かれた質問をする。
2.援助者へ情報を提供するよりも、相談者の考えが明確化される質問をする。
3.過剰に質問を繰り返すパターンに陥らないようにする。
開かれた質問:「あなたとご両親との関係はいかがですか?」
閉ざされた質問:「あなたはご両親と仲がいいですか?
間接的な導き
何かを始める
1.導くことについて明確な目的を定める。
2.導きは意図的に漠然とした曖昧なものにしておく。
3.開かれた質問をする。
4.相談者が導かれていることに気づけるよう、援助者は十分な間を置く。
「何を話したいのでしょうか?」「まず、あなたの今の状況について聞かせていただきたいのですが」「どのようなことで相談にいらしたのかをお聞かせください」「そのことについてもっとお話しください」「どのように感じましたか?
 
直接的な導き
議論を促進したり、より深いものにしたりする
1.導く目的を定める。
2.明確で具体的な言葉で目的を述べる。
3.開かれた質問を用いる。
4.あなたの導きに応じるかは、相談者の自由意志に任せる。
「あなたのお母さんについてもっと話してください」「教えるということに対するあなたの考えを、もう少し探ってみませんか」「最近起きたことについて、どのように説明できるでしょうか?
焦点化
混乱、拡散、漠然としている状況をコントロールする
1.焦点化する時期を定める指針として、援助者自身の困惑した感覚と、相談者の自分自身の姿勢に対する感覚を利用する。
2.相談者からの話題の重要性を示すフィードバックに注意する。
3.話し合う中で曖昧になりやすい自分の感情に焦点を合わせるよう、相談者を支援する。
「あなたのお母さんに対する感情についてもっと詳しく明確な言葉で話してみてください」「今まで様々な話題についてお話いただきましたが、その中で一番重要だと思う話題を1つ選んで、それについて詳しくお話いただけますか」「この5分間に話されたことを一言で表現していただけますか」「私と話をしている間、あなたは何を感じていましたか?
3.反映するスキル
感情の反映
感情に反応する
1.話の主題―表現された感情、非言語的な身体反応、話の内容を読み取る。
2.この援助過程の段階での目的である相談者についての理解を深めるために、話の内容と相談者の感情を適切に選択する。
3.感じた感覚を反映する。
4.次に行うことの手がかりを得るために、相談者があなたの反映を受け入れるか、否定するかという反応を待つ。
感情の反映:「言い換えると、あなたは彼のあつかましさに嫌気がさしているのですね」「以前から、常に医者になりたいと願っていたのですね」「その人のそばにいると、いつも罪悪感があるのですね」「その人があなたに罰を与える時には怒っている。しかし一方では、そうされることで安心も感じているのですね」
経験の反映:「あなたは笑っていますが(行動の記述)、心の中では深く傷ついているように感じます(感情の反映)」「あなたは彼女が大切だと言っていましたが(言い換え)、その彼女のことを話す時にはいつも拳を固く握り締めています(解釈)。それを見ていると、あなたは彼女に対して腹立たしさを感じているように思えます(解釈)
内容の反映:相談者「彼の意見で私は本当に切りさ
 かれました」
援助者「それは本当に痛いですね」
経験の反映
援助者の広範囲にわたる洞察を説明的にフィードバックする
内容の反映
新しい言葉で考えを繰り返す、強調のために考えを繰り返す
4.挑戦するスキル

 

自己の感情の認識
援助者の経験に気づく
1.援助者は自分の感情の微妙な変化に気づく必要がある。
2.逆転移感情について洞察する。

 

感情を説明し共有
感情表現のモデルとなる
1.相談者自身の感情を共有することで、相談者にとってのモデルとなる。
2.相談者に感情を共有してくれるよう求める。
3.感情の共有の度合いや程度が適度であるように注意する。
「あなたは、よく他人を傷つけても何とも思わないとお話になりますね。それを聞いているとあまり良い気分ではありません」「あなたがそのように自分のことを話されるとうれしいですね」
「今、あなたは何を感じていますか?
意見をフィードバックする
援助者は意見を述べ、反応することを通して相談者に何らかの情報を提供する
1. 相談者に意見を聞く基準が整っている場合にのみ、フィードバックを行うようにする。
2. 相手の行動に対して反応する前に行動について述べる。
3.相談者の話の内容を判断するよりも、相談者が行動したことについて意見を述べることでフィードバックを行う。
4.相談者には自分自身を変化させる力があることをフィードバックする。
5.フィードバックの内容量は少ない方がよい。
6.フィードバックとは、現在の特定の行動に対して即座に行われる反応である。
7.相談者に、援助者のフィードバックをどのように感じたかについて尋ねる。
1.援助者「あなたが設定した今後の計画についての困難な点をお話しいただきましたが、それを聞いていて、私はあることに気づきました」
相談者「それは何でしょうか。教えてください」
援助者「あなたは、自分自身の能力はとても低いと評価されていると話していました。しかし、私が聞いている限りでは、あなたは自分自身の考えをはっきりと明確に表現しているように見えます」
3.「私は、あなたが私の話を途中で妨げるやり方が好きにはなれません」
自己への挑戦
援助者が内省を行い、これまでに築いてきた信念や考えを見つめ直す
1.自分自身が人生と思考に影響力があること、またそのコントロールが可能であると考える信念について説明を行う。
2.特定の自虐的思考を見極める。
3.歪められた思考がないかを検討する。
4.否定的な思考を、機能的、肯定的な言葉に再構成する。
5.思考や信念を変容させることは容易ではないことを説明し、継続した取り組みの重要性を強調する。

 

5.解釈するスキル
解釈的な質問
気づきを促進すること
1.相談者の基本的なメッセージ(1つではない場合がある)を探す。
2.相談者に、これらメッセージを言い換えて伝える。
3.動機づけ、防衛、要求、スタイルについて、相談者の理論的根拠や、一般的な説明を行う際の視点をもとに、相談者のメッセージに何が意図されているかの理解をつけ加える。
4.言葉の選択はシンプルにし、相談者のメッセージに近いレベルにとどめる。強引な推測や難解な言葉での表現は避ける。
5.相談者の言葉や行動への意図に対して、あなたが仮の考えを提供しているということを暗示するような言葉で、あなたの考えを紹介する。
6.あなたの解釈に対して、相談者に反応するように求める。
7.相談者自身が解釈を行えるように教える。
解釈的な質問:「あなたは、ご自分の家族について、全く個人的関心を持たない。傍観者のような存在だと話されました。ということは、あなた自身も、家族に対して個人的感情がないと私は推測したのですが……」
隠喩:「私には、まるで誰かがあなたを窮屈で小さな箱に押し込めているように見えます。そこにとどまっている必要はあるのでしょうか?外に出るために必要なことは何でしょうか?
イメージ:「光が見える」「正しいように聞こえる」「その考え方にとらわれる」「臭い話」
5.「この言い方はしっくりくるものでしたでしょうか?」「私の理解の仕方は」「私が思うには」「これが気に入るか試してみてください」
空想および隠喩
考えや感情を象徴化する
6.情報を提供するスキル
助言
経験に基づく提案や意見を与える
1.あなたが宣言している専門領域には、十分な知識を蓄えておく。または、情報源を把握しておく。
2.使用法やその限界に関する訓練課程を経ずに、教育的、心理的検査器具の使用を行わない。
3.助言が専門知識に基づく確かな提案の形でない限りは、助言を用いてはならない。

 

 

情報提供
専門的知識に基づく妥当な情報を与える
7.要約するスキル
テーマをまとめること

 

1.相談者の話の中に存在する様々なテーマや感情に注目する。
2.話の中核となる考えや感情を、相談者の基本的なメッセージとして大まかにまとめる。
3.要約の中では、援助者が新たに意味づけをしない。
4.話の内容における基本的なテーマや、取り決め、計画などについて要約する際、援助者がそれを行うことが有益かどうかを判断する。
「あなたはご自分が抱いておられる仕事への理解や、過去の仕事でどのようなことが好きで、どのようなことが嫌だったかをお話くださいました。また、新たに学ぶことがあり、その計画をお持ちであることもお話しくださいました。では、新しい職場でのこれからの取り組みに対して感じている心配について話し合ってみましょう」「今お話いただいた点は、私たちの行ってきた作業とどのような関係があるのでしょうか。ご自分の言葉で簡単にまとめてみていただけますか」

※空白は該当無し